スクランブル・ウィザード4 [☆☆☆☆]
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ついに姿を現した一花。十郎の姉であり、最強クラスの天才魔法士でもある一花は、暴力的な方法で現状を強引に変えようと動き始める。一方、事態に危険を感じた十郎は、月子をわざと突き放す。それでも十郎の力になりたい月子。能勢や友人たちの協力を得て一花の心情に迫り、やがて自分が進むべき道を見出していくが・・・・・。さまざまな思いが折り重なる、衝撃の第4巻!
最近のHJ文庫の主力と言っても過言ではないであろうスクロリの最新刊がようやく発売。
東京では4日くらい前にもう発売されていたようだが、京都ではまさかの予定日入荷だった。なんだこの焦らしプレイは。新手の嫌がらせですか。
まず帯で致命的なミスを犯していることをここで言及せねばなるまい。
今回の帯での煽り文句に「敵は天才ヤンデレ魔法士!!」なる文章が用いられているわけであるが、これが酷い。何故酷いかというと、スクロリ未読者がこの煽り文句を見た場合、ある種コミカルな作風なのかなという誤った印象を持ちかねないため。
他の巻ならまだ少しはコミカルといえるかもしれないが、少なくともシリアス一直線な今巻においてこの煽り文句は大失敗と言わざるをえない。思わず編集部の力量を疑う。
あとこの文句自体が実はネタバレ臭さを持っているという。編集部だらしねぇな。
さて今回は、前巻エピローグで登場した瞬間にいきなり十郎の腹をドスっと刺してのけた一花姉の話。前巻でこのシーンを見た瞬間に思わず「キャーキャー!」と叫んだ自分はそろそろ精神が本格的に危ない。こういうシーン大好きです(^p^)
一花アンタどれだけ病んでんねんと思っていたら想像以上に病んでた。数年前の派遣中でのとある一件のせいで見事なまでに理性をすっ飛ばした彼女の前に広がるのは、躊躇なく先の派遣の関係者を殺していくことでどんどん増えていく死体、そして血の驟雨。いやたまりませんね。
こういうった酷薄の微笑を浮かべつつ自覚なき内なる狂気に身を任せて情け容赦なく殺していくキャラが大好きすぎることを再認識。……こいつ病気だって言ってくれて構わないよ! 病気だからね!
まあ最終的にはそんな一花の行動原理が大方の予想通り、いやむしろこれ以外予想できないというものであったことが判明するわけではあるが、その辺までせっせと語ろうとすると過度にネタバレな気が少しするので自重してみる。大して意味がないことは自覚済みだが。
そんな狂える一花の心情を知るため、卯滝先生や友人二人と行動を起こす月子であるが、その行動のなかで彼女の確かな成長ぶりが垣間見えてなんとも微笑ましい。特に一花に思いの丈をぶちまけるシーンは白眉。こういうあたりの書き方の上手さが素晴らしい。
それにしても十郎と一花の衝突シーンが意外にあっさり終わってしまって少し拍子抜けだった感が。そこはストーリー的にも結構重要なところだったし、バトルパートとしても有益だったと思うからもっとページを割いて書いてもよかったと思うんじゃ。ただでさえページ少なめ(253P)なんだし。
ここでストーリーに一区切りがついたので、ここから話をどう持っていくのか楽しみになってまいりましたよ。
だいぶ登場人物が増えてきてそろそろ誰が誰だか少しわかりづらくなってるような気がするので、次巻あたりには人物相関とかキャラまとめ的なものを掲載してもらいたい。特に悪役ラインのあたりがさっぱりになってまいりました。
……ラストの十郎のあの台詞はプロポーズだよなあ。