紅はくれなゐ [☆☆☆☆]
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華やかな活況を見せる遊郭都市、吉原。街一番の妓楼・秋月楼の花魁『紅』は、そのおっとりとした優しさと美しい容貌で、高い人気を誇っていた。この吉原で、続けざまに殺しが起こる。被害者はいずれも遊女と国の高官。街に不穏な空気が漂いはじめたある日、正月の大行事“花魁道中”を控えた紅の元に、脅迫状が届く。彼女の身を案じた周囲は道中の中止を勧めるが、紅は行事の強行を決意する。そして花魁道中当日…。
果たして、殺しを続けているのは誰なのか? そして、その狙いは?
愛と憎しみの黒い渦に巻き込まれた、若く美しき花魁の行く末や如何に―。
第15回電撃小説大賞『電撃文庫MAGAZINE賞』受賞作家が描く和風ファンタジー。
とても17歳の女子高生が書いたとは思えないほどにしっかりした内容だな、というのが第一印象。所々突っ込みが必要なところもあったが、それでもこれだけのものを書いたというのは素直に吃驚した。作者の今後に期待が集まりそうである。
舞台は遊女屋の集まる、盛況な遊廓都市・吉原。ちなみにこの吉原というのが実在する地名であり、江戸時代以降、公許の遊女屋が集まる遊廓があった地域であったというのを後で知った口の自分は、後書きでそのことについて言及されていたついでに吉原について調べてみて唸った。こんなインスパイア元があったのか。まだまだ知識が足りないなと意識を新たにするよい切っ掛けになった。
そんな吉原一番の妓楼・秋月楼の花魁『紅』。基本的には気弱な彼女を中心として話が展開されていく。
どういう展開であったのか、そしてその意外さについての自分の想いをここで一気に書いてしまいたいところではあるが、如何せんネタバレが過ぎるので今回は自重しておきたい。それほどまでに意外な展開なので、そういうものが好きな人は読んでみるといいという率直な意見をここで提言。
だが、そんな彼女よりもいいキャラをしていたのが、吉原自警隊隊長であるベルガモット。まさにMVP。カラー絵といい、キャラ立てといい、戦闘シーンでの格好よさといい、自分の中では少なくとも紅以上に目立っていたキャラ。こういう割と渋めなおっさんキャラが元から好きだというのを思考から除いても、これは素晴らしい造形。P269の挿絵とか、たまりませんな。
惜しむらくは台詞回しか。歴史っぽさ・古風な感じを前面に押し出すのなら、もう少し片仮名の使用を控えるべき。登場人物に『異人』がいる以上は最低限の片仮名の使用も致し方ないが、そんな彼らも吉原に慣れきっている感じなので、できれば台詞中での片仮名の使用は勘弁してもらいたかった。
あとはもう少し鬱な感じが出ていたらど真ん中ストライクだったのかな。
まあそうはいってもそれなりの完成度であることになんら変わりはないので、少しでも興味のある人は読んでみるといいのではないだろうか。