ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc2 [☆☆]
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まさかのリアル幼馴染ルート出現!?
〈世界改変〉のエラーのお陰で愛するヒロインたちを取り戻した俺こと都筑武紀。みんなを幸せにする! ――誓いを胸に激甘なハーレムライフを送る俺だったが、近頃学校では奇妙な噂が流れていた。「伝説の木で恋愛成就」? ちょっと待て、そんなゲームなかったか? まさか誰かが〈世界改変〉を!? そして、このタイミングでリアル幼馴染との再会なんてイベントも発生!! どうする俺!? 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第2弾!!
一巻で綺麗に終わらせていただけに、続刊が出ると聞いたときは思わず『なん……だと……』と呟いてしまった。一体どうやって続けるのかと思っていたが、なるほど別のゲームを世界へ投影するという形をとったのか。これなら納得である。
一巻での展開や設定を上手く利用していたのは評価できたが、如何せん二巻での追加設定(追加内容)がごちゃごちゃしすぎており、読んでいて混乱した。オチもある程度までは納得できる内容だったが、ろくにしっくりこなかった。オチとしてはこれ以外ないとも思うが、そこに至るプロセスに問題があった気がしてならない。
表紙で春海夏海を起用していたので、二巻ではそちら方面からのアプローチをするのかと勝手に想像していたが、本編に全くこの姉妹が絡んでこないという新手のトラップに引っかかってしまい、その時点で軽い混乱を起こした(実は一巻カラーページを見返すまでこの姉妹のことを忘れていたのは内緒)。
今回のメインキャラである幼馴染の佐崎が登場し、その心情を吐露していく様子は書き方として上手いのだが、佐崎とろくに関係性が見てとれない(少なくとも自分は読んでいてそう思った)三人がいきなり中盤で登場し、その三人がストーリーを延々引っ張っていったせいで佐崎の存在意義がろくに目立たなくなってしまい、さすがにこれはどうかと考えざるを得なかった。ストーリー上でその存在自体は少なくとも必要だということは頭では理解できるのだが、ろくにキャラが立っていないせいか少々苛々を抑えきれなくなることも。
新キャラ三名側の各々の心情が後半までろくに書かれないせいで、妙に引っかかりを覚えてしまう。致命的に後半部分の描写が足りていないので、凄くもにょもにょする。
こうなるくらいなら、この三名をプロローグで登場させて、その後に佐崎と主人公の再開シーン、中盤あたりで三名の各々の心情について軽く描写、終盤で一気に盛り上げる、という形をとったほうがよかったのではないだろうか。相手サイドの考えがろくにわからないまま終盤に突入し気づいたら終わった、というのは流石に少々許しがたいものがある。
……とまあここまで自分の負の感情をぶちまけてきたわけだが、この作品の唯一の清涼剤は何といっても高橋さんであろう。P137の挿絵であったり、ヘタレ主人公を怒りながら説教するシーンであったり、ラストであったり、読んでいて非常に和む。高橋さん格好いいよ高橋さん。高橋さん可愛いよ高橋さん。
高橋さんがいなかったらこの作品の存在意義すら失われるであろう、とすら思っている。
後書きで言及されていたFBOnline掲載短編を読んで改めて思ったことであるが、この作者はずっと短編を書いていたほうがいい。明らかに短編向けの書き方を長編でもずっとしていると思う。
それなりの筆力はあるので好きな人は好きになれるだろうが、少なくとも自分は今巻で切ることにしたいと思う。短編が出たら買う、あと高橋さんが続刊以降大活躍という風の噂が流れたらその巻だけ買う。
後は続きを読む人に任せよう……。